「まあ、欣三さん、良平、どうしたの。なにかあったの。いまのさわぎはどうしたの?」

そういう聲はおかあさんである。見るとドアのうちがわには、大きな長いすが押しつけてある。おじさんはそれを押しのけながら、

「アッハッハ、ねえさん、なにもご心配なさることはありませんよ。どろぼうがはいったのですがね、かわいいおきみやげをおいて、逃げてしまいましたよ」

「まあ、そしてなにかとられたの」

おかあさんのそのことばに良平は、はじめて気がついたように、へやのなかを見まわしたが、すぐアッと叫ぶと、

「おじさん、おじさん、やっぱりそうだよ。どろぼうはあの劍�頦踏工撙摔�郡螭坤琛�

その聲におかあさんもおじさんも、ハッと壁のほうをふりむいたが、そのとたん、ふたりともおもわず大きく目を見張った。

ああ、どろぼうはあきらかに、悪魔の畫像をぬすみにきたのである。

しかし、あの大きながくぶちから、はずすことができなかったので、ふちから切りぬいていこうとしたのだろう。半分ほど切りぬかれたカンバスが、ダラリとがくぶちからぶらさがっているのだった。

どろぼうの忘れ物

おじさんが電話をかけると、すぐにおまわりさんがやってきた。そのおまわりさんは|上《かみ》|村《むら》さんといって、たいへんしんせつな人だった。

上村さんは話を聞くと目をまるくして、

「へえ、どろぼうがこの子をおきざりに……」

上村さんはなだめたり、すかしたりして、さまざまにたずねたが、少女は泣くばかりで、ひとこともこたえない。上村さんはとほうにくれて、とうとう少女を警察へ連れていくことになった。

「ねえ、上村さん、おねがいですから、この子をあまりおどかさないでね」

おかあさんは心配そうに少女にむかって、

「あなた警察へいったら、なにもかも、正直にいうんですよ。こわがることはありませんからね。あなたは悪い子じゃない。それは、このおばさんがちゃんと、知ってますからね」

少女はそれを聞くといよいよはげしく泣きながら、おまわりさんに連れていかれた。

その日は日曜日だったので、夜があけてからも一同は、このふしぎな事件について語り合った。しかし、だれにもこの謎を、とくことはできなかった。

どろぼうが、悪魔の畫像をぬすみにきたことはわかっている。しかし、あの少女はどうしたのだろうか。あの子はどろぼうの仲間なのだろうか。

みんなそれをふしぎがっていたが、しかし間もなく、その謎だけはとけた。晝すぎに上村さんがやってきて、

「やっとあの子がしゃべりましたよ。あの子は|杉《すぎ》|芳《よし》|子《こ》といって……」

と、上村さんは悪魔の畫像を指さしながら、

「この劍�頦�い可紕僦��蚊盲勝螭扦埂�

それを聞くと一同は、ギョッと顔を見合わせたが、そこで上村さんの語るところによるとこうなのだった。

杉勝之助が自殺したとき、芳子はまだ七つだった。ふたりには両親がなかったので、おじの|諸《もろ》|口《ぐち》|章太《しょうた》というひとが、芳子をひきとった。そのとき章太は、勝之助の劍�頦工盲�隯嬰轆悉槨盲皮筏蓼盲郡韋扦ⅳ搿¥餞欷�い蓼�榘四轆郅嗓蓼à韋長趣坤盲俊�

芳子はそののち章太